第一話 父の遺品整理で大量の切手を発見
親父が死んだ。
享年79歳。
前立腺がんでした。
親父は晩年、家庭菜園だけが趣味の男でした。その他には趣味という趣味はなく、たまに近くの波止場に釣りに行くくらいでしょうか…。
同県内に住んではいますが、距離が離れていることからめったに顔を合わせることはありません。それでもたまに顔見せるととても嬉しそうにしてくれる、、そんな親父でした。
親父は物を持たない主義でした。
昔の人間にしては珍しいタイプかもしれません。
今で言う「ミニマリスト」という言葉がよく似合う男です。タンスひとつにすべての物が入るくらいで、「必要なものは揃っている」というのが口癖でした。その割に母や僕や妹には何かにつけプレゼントをしてくれる素敵な親父でした。
父の遺品整理
ある日母から「お父さんの遺品整理をするから手伝ってほしい」と電話がありました。親父が亡くなってから半年ほど経ってでしたが、「ようやく気持ちの整理がついたのか」とほっと胸をなでおろした瞬間でした。
とはいえ、親父は物をほとんど持っていません。
母一人でも遺品整理できるのでは? と思いつつ実家へ。
実家へつくと、母は開口一番「こんなものが出てきた」と20冊程度のファイルを見せてきました。
「なんじゃこりゃ?」と思いつつ中を確認。
そこには大量の「切手」がきれいに保管してありました。
これを見て、僕は過去の父の姿を鮮明に思い出しました。
趣味という趣味のない父が、唯一大切にしてきたもの。僕が幼いころ、「お父さんが学生の頃から集めたものなんだよ」とうれしいそうに話す親父の姿。
「これは昔のオリンピックの記念切手だよ」
「ほら、虫の切手もあるねぇ」
「外国にはね、三角の切手もあるんだよ」
親父は「切手収集」が趣味だったのです。
切手ブックの中には昔の切手がきれいに収められています。几帳面な親父の性格がよく現れていて少しおかしくなりました。
「1964年発行 第18回 オリンピック競技大会記念切手」
「1958年発行 第3回 アジア競技大会記念切手」
「1894年発行 日本初の記念切手 明治天皇銀婚 貳銭」
「1964年発行 東京オリンピック記念切手」
「1972年発行 鉄道100周年記念切手」
「日本政府収入印紙 弐拾円」
ここではほんの一部を紹介させてもらってますが、僕が生まれる前に発行された切手も数多く、しばらくの間見入ってしまいました。
さて、ここで問題になってくるのが、
「この切手、どうしよう??」
ということです。
母の願い
切手についてどうするのか母にたずねたところ、
「使用済みの切手だらけに見えたから最初は捨てようかと思った」
「でも使ってない切手もあるよね? 切手がこんなにあっても使わないし…売れるんなら売って欲しい。私はぜんぜんわからないからあんたに任せる」
とのことでした。
父が大切にしていたものとは言え、僕も母も切手には興味がありません。でも、興味のない人間が手元に残していても価値はありませんよね。
それならお金に変えることもでき、欲しい人の手に渡る可能性がある「売却」という方法を取りたいとのことでした。母は、「どうせなら高く売ってね★」とかなりお気楽。
頼み方が気に入りません(笑)が、僕としても、せっかくですから1円でも高く買い取ってもらいたいというのが本音です。そこで、親父の切手をどうすれば高く売ることができるのか調べることにしました。